包括的性教育による効果ってどんなもの?~30年にわたる研究で明らかになったこととは?~
- Asuka Someya
- 4月30日
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更新日:5月9日

性教育には、子ども・若者達の性の健康とウェルビーイングにとって重要な役割を果たしています。妊娠や性感染症の予防の他、どんな有効性があるのか、30年間の性教育の実践研究を分析して、大きな影響を及ぼす力があることが分かっています。
エヴァ・S・ゴールドファーブらによる「Three Decades of Research: The Case for Comprehensive Sex Education(30年にわたる研究:包括的性教育の正当性)」(2020年)によると、学校における包括的性教育の有効性を示すため、30年間の米国における性教育の実践に関する研究を系統的に文献のレビューをしました。
その結果、性教育が10代の若者の妊娠や性感染症の予防に役立つだけでなく、様々な効果が期待できることが分かりました。
・子どもの性的虐待の防止
→小学校における効果的な児童の性的虐待防止の取り組みでは、プログラム全体を通じて大幅な知識の向上が見られ、特に高学年の児童の間では自分を守るスキルが向上します。また、自己肯定感、自己効力感、安心感が得られ、適切で安全な触れ合いに関する知識が大幅に向上すると分かりました。
・LGBTQの子ども・若者達にとってより安全な学校空間の創出
→個別の授業の取り組みだけではなく、カリキュラム全体を通してインクルーシブな取り組みを行うことも含め、ジェンダーや性のあり方に関するいじめやハラスメントの防止につながると分かりました。
・健康的な人間関係の促進
→人間関係内のコミュニケーションを題材とするカリキュラムによって、コミュニケーションを図る能力と意思が向上する成果が得られました。これには交際相手同士や親および医療従事者との間で、恋愛関係や性について話し合う意識の向上も含まれていました。
・デートDVやパートナー・配偶者からの暴力の減少
→学校でのプログラムで、デートDVや配偶者からの暴力を取り扱うことで、それらを減らすための知識を向上させ、態度を変え、スキルを伸ばし、実際にデートDVと配偶者からの暴力の両方を減らすことに有効であると示されました。
その他にも、社会性と情動の学び(Social Emotional Learning)の促進、メディアリテラシーの向上にも役立つことが判明しました。
また、性教育においては、低年齢から始め、学年ごとに徐々に積み上げていくアプローチがより効果的であることも分かりました。いくつかの研究は、性教育に充てられる時間が少ない傾向を踏まえ、複数の授業や学年にわたる教え方や、より長期間のプログラムを強く支持しています。
カリキュラムの他のすべての分野と同様に、早期に基礎を築き、発達段階に適した内容と指導で学習を積み上げていく方式は、健康的な性的発達を支える知識、態度、スキルを長期的に育む上で重要なことも分かりました。
このような結果から、就学前・小学生の頃から性の健康に関する様々な定義を取り扱い、人間のセクシュアリティに対して肯定的で包括的なアプローチの有効性を示す証拠が得られました。
また、この結果は、国の性教育のスタンダードとして広く採用することの正当性を強めるものです。