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これまでの「はどめ規定」削除の経緯と動向まとめ

  • 3月24日
  • 読了時間: 5分

  学習指導要領には長年、「○○は取り扱わないものとする」といった否定形の記述=いわゆる「はどめ規定」が盛り込まれてきました。これは教育内容の枠を明確にする意図があったものの、現場では「教えてはいけない」という誤解を招き、性教育をはじめとした指導の萎縮につながってきました。近年、文部科学省はこうした「はどめ規定」を原則削除する方針を明示し、複数教科での見直しを進めています。

 これまでに削除・見直された歯止め規定の具体的な項目と、削除に至った理由・根拠を、整理しました。


はどめ規定の削除経緯のまとめ

  • 文部科学省は2008年(平成20年)の総括部会 教科書検定手続き改善に関するワーキンググループにて、「新学習指導要領においては、いわゆる『はどめ規定』を原則削除した」と明記しています。具体例として算数・数学・理科など複数教科の文言が削除・緩和されています。参考:文部科学省

  • 文部科学省は、はどめ規定について、教えてはならないものではなく、すべての児童生徒に共通に指導するべきではない事項としています。


 いわゆる「はどめ規定」は、学習指導要領において、発展的な内容を教えてはならないという趣旨ではなく、すべての児童生徒に共通に指導するべきではない事項について現行学習指導要領で「(…の)事項は扱わないものとする」等と定めていたもの。教科書においては、従来から「発展的な学習内容」として記述することが可能。(例:中学校理科「イオン」)現行学習指導要領で「扱わないこと」等とされていた内容が、新学習指導要領において共通に指導する内容とされた場合は、教科書においても学習指導要領に示されている内容として記述されることとなる。 参考:文部科学省


 しかし、性教育に関するはどめ規定のみが未だに残っています。文部科学省は「発達段階に配慮して設けた規定で、性交を教えてはいけないと禁止するものではない」と説明する一方、「個別指導と集団で一律に指導すべき内容を分けるべき」としており、実質的には教育現場では依然「禁止」として受け取られています。その一方、はどめ規定を超えた内容を含める性教育に拡充すべきだという教育委員会も半数あると報道されています。


  • これまではどめ規定の撤廃・見直しに至った主な理由・根拠は次の3点:

    • 学校の裁量と創意工夫を尊重し、現場が発展的内容を実施できるようにするため。

    • 文言が「教えてはいけない」と誤解され、教育の萎縮を招いているため。

    • 学習指導要領は“大綱的基準”であり、「否定文」で教育内容を制限する書き方は適切でないという答申・専門委員会の判断。


具体的に「削除・見直し」された項目例

  • 小学校算数(第6学年)

    • 旧:比の値は取り扱わないものとする。

    • 新:この否定文が削除され、学校の判断で取り扱う余地が明確化された。


  • 中学校数学(第3学年)

    • 旧:二次方程式等の取り扱いに限定的な記述(解の公式は取り扱わない等)。

    • 新:限定的な否定文や「取り扱わない」表現が見直され、実施内容の裁量が拡大された。


  • 小学校理科(第3・5学年)

    • 旧:扱う植物や受粉の範囲について否定形で限定していた記述が、より柔軟に扱えるよう修正された(例:受粉について触れることに変更)。


※上記は文科省配付資料の抜粋例であり、「はどめ規定の原則削除」の具体例として挙げられているものです。


性教育分野におけるはどめ規定の変遷

  • 1998年改訂で中学校保健体育に「妊娠の経過は取り扱わないものとする」等のはどめ文言が明記され、これが教育現場では「性交や避妊は教えない」と理解されています。


  • 2008年改訂以降に一部規定が整理・削除された記録があるものの、1998年導入の表現は依然として現場に影響を与えており、現場の萎縮は続いていると考えられます。


  • 2020年代は、若年妊娠や性暴力、SNSでの誤情報など社会的課題が顕在化したこと、刑法改正で同意の定義が明確化されたこと等を背景に、NPOや教育関係者から「はどめ規定撤廃」の強い要請が出されています。


  • 一方で、文科省では学習指導要領見直しにおいて性教育に関連する「はどめ規定」の検討はされていません。2022年10月の衆議院文部科学委員会にて文部科学大臣は「はどめ規定を撤廃することを考えていない」と答弁。また、2025年6月の文部科学大臣の会見にて、下記のように答弁がされています。


はどめ規定の導入経緯

中学校保健体育の学習指導要領において、妊娠の経過は取り扱わないとしている規定は平成10年の改訂時に設けられたもの。性に関しては、中学校の段階では特に生徒間の発達の差異が大きく、また保護者の理解を得ながら実施する必要があることなどを踏まえ、個々の児童生徒の状況等に応じた個別指導により対応することを主旨としている。


はどめ規定が性交や妊娠・中絶について教えたいという学校に対して、事実上障壁となっていることについてどのように考えるのか ご指摘の学習指導要領の規定におきましては当該事項を教えてはならないという主旨ではなく、個別の児童生徒の状況等に応じた個別指導により対応するという主旨。指導に当たる関係者が共通に認識できるようにすることが重要である。

また、性に関する指導として発達の段階を踏まえ、学校全体で共通の理解を図り、また保護者の理解を得ながら実施するようにすることにつきましても、認識の共有を図る必要がある。文部科学省としては関係者の理解が深まるよう引き続き周知に努めていく。


 行政文書(文科省の配付資料)で「原則削除」とされているため、政策上は既に削除方向が定まっているはどめ規定ですが、性教育に関する部分のみが様々な声がある一方で維持されています。学習指導要領の文言整理にとどまらず、教育のあり方そのものを問い直す大きな転換点です。ただし、文言を消すだけでは現場の萎縮は改善しません。制度的な撤廃を実効あるものにするために、現場を支える具体策の構築は不可欠です。


参考文献

・文部科学省「新学習指導要領における、いわゆる『はどめ規定』について」資料(学習指導要領見直し配付資料)。文部科学省

・朝日新聞「導入時の担当者に聞く、性教育の『はどめ規定』」ほか性教育に関するシリーズ記事。朝日新聞

・日本財団 等「包括的性教育の推進に関する提言書」/関連NPO提言。日本財団

・各種研究報告(日本医療総合研究所ワーキングペーパー等)・教育実践レポート(大学・教育委員会の資料)。日本医師会


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