性教育は何歳から始めるものなのでしょうか?5歳?それとも思春期?それとも結婚してから?
✓生まれた時から性教育は始まっている
WHOの包括的性教育に関するQ&Aでは、子ども・若者たちは、年齢や発達段階にあわせて自分自身や周囲の世界について教育を受ける権利があり、健康と幸福(ウェルビーイング)のための学びを必要としているとしています。
学校での包括的性教育のカリキュラムをサポートすることを目的としたユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、世界の国々で学校教育が始まることが多い 5 歳から 包括的性教育を始めることを推奨しています。
一方で、性教育は5歳まで待って始めないといけないわけではありません。
性教育は生まれてから死ぬまでの生涯にわたるプロセスであり、信頼できる保護者と一緒に家庭でより早くから始まることもある、としています。
保護者は、安心・安全であたたかい環境の中で、子どもに信頼を示し、相互に尊重し合う対話から性教育を始めることができます。
✓幼い子への性教育はどんなことを伝えるの?
性教育と言えば、ナプキンの使い方や性行為、避妊、性感染症といった内容が思い浮かぶ人も多いかもしれません。
ただ、WHOによると、性教育の学習は段階的で、幼い年齢の子どもに教えられることは、思春期や青年期の若者に教えられることとはかなり異なるとしています。
幼い子どもの場合、セクシュアリティ・性について教えることは必ずしもセックスについて教えることを意味するわけではありません。
たとえば、ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、5~8歳の学習内容として、からだの部分の正しい名称とはたらき、人間の生殖に関する仕組みに加え、家族やさまざまな人間関係、意思決定、同意、暴力、いじめ、虐待が発生した場合の対処法、インターネットやメディアとのかかわり方なども含まれています。
これらのテーマについて子どもが持つ権利や選択肢、実際にどのような対応ができるのかなどを話し合うことは、子どもたちが自分の体について学び、自分の気持ちや感情を認識するのに役立ちます。そして、このような学習は、生涯にわたる健康的な人間関係の基礎を築くことにつながります。
様々な性教育の絵本や動画、保護者向けの性教育の書籍などもあり、子どもや保護者にあったものを選ぶことから始めるのもいいかもしれません。
【参考】
地域での性教育講座を受講したり、幼稚園・保育園や小学校などに、性教育や生命の安全教育の実施予定があるのか、問い合わせるのも一つの方法です。
✓思春期から性教育を始めるのでは遅い?
ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』によると、若者はすでにインターネットやSNSなどによって事実ではない情報や、歪んだメッセージを受け取っています。
若者にとって、正確な情報とそうでない情報を見分けることは簡単なことではありません。また、インターネットやSNSからの性に関する情報を受け身で見ているだけでは、それについて、話し合ったり、振り返ったり、討論したりする、もしくは関連するスキルを発達させるといった余地はありません。
だからこそ、幼い時から包括的性教育によって、情報のリテラシーや性に関するイメージ・価値観も含めて、信頼できる大人や友人と考え、理解する機会を作っていくことが大切なのです。
✓結婚してから性教育を始めるのでは遅い?
現代の日本では、初婚の平均年齢が30歳前後であり、また、すべての人が結婚という選択を選ぶわけではありません。「結婚してから性のことを学ぶ」というのは、「結婚するまで性行為をしないのがよい」「性行為は結婚したカップルが子どもを作るためのものであり、それ以外は認めない」という禁欲主義的な価値観からきていると考えられます。
WHOによると、避妊についての情報を与えず、「結婚するまで性行為をしない」と誓わせるような禁欲主義・純潔主義の性教育は効果がないだけではなく、逆に望まない妊娠や性感染症が増えるなどのネガティブな影響を与える可能性があることが分かっています。
なぜなら、避妊や性感染症予防の情報を得ることが難しくなったり、もし性について困ったことがあっても、先生や保護者などの大人に相談や質問ができず、誤った知識や認識を持ってしまう可能性が高まるからです。