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包括的性教育によって10代の妊娠は本当に減るの?

更新日:5月13日

2015年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、包括的性教育には、初交年齢の遅れ、避妊具の使用の増加、性感染症や意図しない妊娠の減少といった効果があると発表しました。では実際のところ、包括的性教育を受けることで、若者の行動や社会的な課題にはどのくらい影響があるのでしょうか?


アメリカは、他の先進国と比べて10代の出生率が高く、特に意図しない妊娠が大きな社会的課題となっています。こうした背景のもと、ニコラス・D・E・マークらの研究チームは、「More comprehensive sex education reduced teen births: Quasi-experimental evidence(より包括的な性教育が10代の出産を減少させた:準実験的証拠)」(2021)という論文を発表しました。


この研究の目的は、アメリカ政府が支援する包括的性教育プログラムが、10代の出生率にどのような影響を与えたのかについて検証することでした。

結果として、包括的性教育には10代の出生率を減少させる効果があることが明らかになりました。


研究の概要


✓研究期間・対象:1996年から2017年、全米2,927の郡


✓対象年齢:14歳~19歳の女性の出生率


✓使用データ:

 ①出生証明書に基づく年齢別出生率データ

 ②アメリカ政府の性教育プログラムへの資金提供データ

 ③郡ごとの人口統計情報(年齢、人種、経済状況など)


これらのデータをもとに、「政府から包括的性教育への資金提供があった郡」と「そうでない郡」の出生率の変化を比較・分析しました。この調査は、禁欲教育(結婚するまで性行為をしないと誓わせる自己抑制を求める性教育)のための資金提供を受けていた郡(173郡)を除外しています。


研究結果

(1)包括的性教育への資金提供があった郡(55郡)では、10代の出生率が平均で3.3%減少しました。

(2)資金提供から5年後には、その効果がさらに高まり、最大で7%の減少が見られました。


この研究は、包括的性教育が実際の地域社会で10代の出生率を下げるという、信頼性の高い証拠を示しています。加えて、よく使われるランダム化比較試験(研究対象を無作為に2つ以上のグループに分けて調べる方法)では得られなかった、現実の社会での長期的な変化を捉えた点が大きな特徴です。


禁欲のみを求める教育ではなく、包括的性教育に資金を投じた地域で10代の出産が減ったという結果は、性教育の政策づくりにおいて、確かなデータに基づいて考えることの大切さをあらためて教えてくれます。


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