包括的性教育は性についての混乱を招く?
- Asuka Someya
- 2024年12月26日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年12月28日

包括的性教育ではジェンダーを教えるため、子ども・若者たちの性のあり方に混乱を招くものでしょうか?
FACT:包括的性教育は、ジェンダーについて理解し、ジェンダーに基づく暴力を減らすことに有効です。むしろ、性的マイノリティの若者に関連する情報が不足していることが課題です。
詳しく見ていきましょう。
✓包括的性教育はジェンダーによる暴力に気づき、対抗していくための学び
ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、世界中の性教育の研究をもとに、年齢と発達段階にあわせて、からだの部分の正しい名称や人間の生殖を学習と共に、ジェンダーの平等やジェンダーに基づく暴力について教えることを推奨しています。
世界中の女の子の18%、つまりほぼ5人に1人が性的虐待を経験していると推定されています。
しかし、包括的性教育によって、不平等なジェンダー規範に気づき、それを変えることに貢献できる可能性があり、ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』ではジェンダーも含めて教えることが重要である
ということが説明されています。
また、包括的性教育は、子ども・若者たちのジェンダーや性のあり方を決めつけるものではなく、「ジェンダーに基づく差別や暴力を受けずに、自分の性のあり方を表現できる権利」を学ぶものです。
ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、キーコンセプト3. が「ジェンダーの理解」がテーマとなっていて、
3.1 ジェンダーとジェンダー規範の社会構築性
3.2 ジェンダー平等、ジェンダーステレオタイプ、ジェンダーバイアス
3.3 ジェンダーに基づく暴力
がトピックとして挙げられています。
その学習目標の中では、
・生物学的性とジェンダーの違いを理解することは重要です。(5~8歳)
・すべての人は、ジェンダーに関係なく、平等に価値があります。 (5~8歳)
・それぞれの人が自分のジェンダーについて、自分自身をどう考え、他人に自分をどう説明するかは、それぞれの人で異なりそれぞれに素晴らしく、尊重されるべきです。(9~12歳)
・ジェンダーステレオタイプやジェンダーバイアスは、男性、女性、そして多様な性的指向とジェンダーアイデンティティを持つ人々をどのように扱うか、また人々の選択に影響を与えます。(12~15歳)
・ジェンダー平等の実現を呼びかけ、性的虐待や有害な慣習、ジェンダーに基づくその他の暴力といった人権侵害に対して声を上げる責任が、すべての人にあります。(15~18歳以上)
といったことも含まれます。
✓包括的性教育においても、性的マイノリティに関する情報は不足している
性的マイノリティに関連する情報を含む学校での包括的性教育が不足していることで、性的マイノリティの子ども・若者たちがインターネットやポルノといった不確かな情報源からしか情報を得られず、その結果、健康への悪影響が出ているとしています。
そのため、包括的性教育においても、より性的マイノリティや様々な性のあり方を前提とした内容にするべきだとされています。
【参考文献】
Maureen Rabbitte, Am J Sex Educ. 2020 Oct 13;15(4):530–542. ,Sex Education in School, are Gender and Sexual Minority Youth Included?: A Decade in Review