インターネット・SNSで、包括的性教育に関する性の多様性、自慰行為、同性同士の性行為を描くような国内外の本やイラストを見ました。これは危険な性教育ではないでしょうか?
FACT:包括的性教育は、個人学習で使うような一部の教材や1コマの授業を指すのではなく、カリキュラムに基づく幅広い性教育プログラム・学習プロセスを指し、年齢や発達段階、文化に応じて行われるものです。
詳しく見ていきましょう。
✓一部の教材やイラストを指して「包括的性教育」とは言えない
ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、包括的性教育の提供される形として、下記のような特徴を挙げています。
科学的に正確であること
徐々に進展すること
年齢・成長に即していること
カリキュラムベースであること
包括的であること
人権的アプローチに基づいていること
ジェンダー平等を基盤にしていること
文化的関係と状況に適応させること
変化をもたらすこと
健康的な選択のためのライフスキルを発達させること
そのため、性教育に関する一部の教材の内容やイラスト等を取り上げて、「包括的性教育の本だ」「包括的性教育は危険」などと結論づけることはできないと考えられます。
国際的な性教育シンクタンク「Rutgers」のレポートによると、
定義によれば、包括的性教育は、家庭内で行われる教育や、本や雑誌、ディスカッション・プラットフォーム、教育ゲーム、ウェブサイトなどのオンライン・メディアを通じた個人学習のほとんどを除外しています。 これらの情報収集や学習機会は、個人の行動に依存しているため、構造化が難しく、包括的性教育の定義には含まれていません。
としています。
✓包括的性教育は性に関するリスクを減らし、慎重な行動につながる
さらに、現実では、子ども・若者たちは、それらの情報よりも過激で露骨な性情報やポルノにさらされています。
また、ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』によると、世界中の性教育を研究した結果、包括的性教育は若者の性行動を促進することはなく、むしろ責任感を高め、リスクの高い性行動を減らし、慎重な行動につながるということが明らかになっています。
✓包括的性教育は自慰行為を推奨するものではない
なお、WHOの包括的性教育に関するQ&Aによれば、包括的性教育は、子ども・若者たちの自慰行為を推奨するものではありません。
しかし、子どもたちが比較的早い年齢で見たり、さわったりして自分の体の探求を始めることが報告されています。これは所見であって、推奨ではありません。 ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、子ども・若者の性に関する科学的に正確で最新の情報を、発達段階に応じて各国、実践者、家族が提供できるよう支援することを目的としています。このガイダンスでは、「自慰行為は健康に有害である」といった誤解を正すことや、子どもたちに年齢に応じた方法で身体、境界、プライバシーについて教えることなどが含まれています。
とされています。