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ネットで過激な包括的性教育の教材を見ました。危険でしょうか?

更新日:1月30日




インターネット・SNSで、包括的性教育に関する性の多様性、自慰行為、同性同士の性行為を描くような国内外の本やイラストを見ました。これは危険な性教育ではないでしょうか?


FACT:包括的性教育は、個人学習で使うような一部の教材や1コマの授業を指すのではなく、カリキュラムに基づく幅広い性教育プログラム・学習プロセスを指し、年齢や発達段階、文化に応じて行われるものです。


詳しく見ていきましょう。



✓一部の教材やイラストを指して「包括的性教育」とは言えない


ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、包括的性教育の提供される形として、下記のような特徴を挙げています。


  1.  科学的に正確であること

  2.  徐々に進展すること

  3. 年齢・成長に即していること

  4. カリキュラムベースであること

  5. 包括的であること

  6. 人権的アプローチに基づいていること

  7. ジェンダー平等を基盤にしていること

  8. 文化的関係と状況に適応させること

  9. 変化をもたらすこと

  10. 健康的な選択のためのライフスキルを発達させること


そのため、性教育に関する一部の教材の内容やイラスト等を取り上げて、「包括的性教育の本だ」「包括的性教育は危険」などと結論づけることはできないと考えられます。


国際的な性教育シンクタンク「Rutgers」のレポートによると、


定義によれば、包括的性教育は、家庭内で行われる教育や、本や雑誌、ディスカッション・プラットフォーム、教育ゲーム、ウェブサイトなどのオンライン・メディアを通じた個人学習のほとんどを除外しています。 これらの情報収集や学習機会は、個人の行動に依存しているため、構造化が難しく、包括的性教育の定義には含まれていません。

としています。


✓包括的性教育は性に関するリスクを減らし、慎重な行動につながる


さらに、現実では、子ども・若者たちは、それらの情報よりも過激で露骨な性情報やポルノにさらされています


また、ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』や、ユネスコのウェブサイトよると、世界中の性教育を研究した結果、包括的性教育は若者の性行動を促進することはなく、むしろ責任感を高め、リスクの高い性行動を減らし、慎重な行動につながるということが明らかになっています。


禁欲(性行為をしないこと)を唯一の選択肢として推奨するプログラムは、効果的ではないことも分かっています。性行為の開始を遅らせたり、性行為の頻度を減らしたり、性行為のパートナー数を減らしたりする上で効果がないと調査・研究により明らかになりました。早期の妊娠や思いがけない妊娠を減らす効果的な性教育のためには、性、生殖に関する健康、避妊に関する教育を幅広く行う必要があります。


そして、包括的性教育は、ジェンダーと権力というテーマも含めて取り扱うことで、思いがけない妊娠や性感染症の予防に成功する可能性が5倍高くなることも分かっています。


親や家族は、子どもにとって情報、価値観の形成、ケア、サポートの主な情報源です。学校での性教育プログラムに親や教師、研修機関、若者向けのサービスが加わることで、性教育は最も大きな効果を発揮します



✓包括的性教育は自慰行為を推奨するものではない


なお、WHOの包括的性教育に関するQ&Aによれば、包括的性教育は、子ども・若者たちの自慰行為を推奨するものではありません。


しかし、子どもたちが比較的早い年齢で見たり、さわったりして自分の体の探求を始めることが報告されています。これは所見であって、推奨ではありません。 ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、子ども・若者の性に関する科学的に正確で最新の情報を、発達段階に応じて各国、実践者、家族が提供できるよう支援することを目的としています。このガイダンスでは、「自慰行為は健康に有害である」といった誤解を正すことや、子どもたちに年齢に応じた方法で身体、境界、プライバシーについて教えることなどが含まれています。


とされています。


✓包括的性教育においても、性的マイノリティに関する情報は不足している


包括的性教育において、多様な性のあり方について含まれることを、危険視する声もありますが、社会では多様な性のあり方や性的マイノリティに対する誤解や偏見、差別にあふれています。そうした性に関する暴力や差別が何かを知り、何がリスクのある行動かどうか、何が科学的に根拠がある情報化を見極めることは、性的マイノリティに限らず、すべての人にとって重要な情報です。



性的マイノリティに関連する情報を含む学校での包括的性教育が不足していることで、性的マイノリティの子ども・若者たちがインターネットやポルノといった不確かな情報源からしか情報を得られず、その結果、健康への悪影響が出ているとしています。


そのため、包括的性教育においても、より性的マイノリティや様々な性のあり方を前提とした内容にするべきだとされています。



【参考文献】

Maureen Rabbitte, Am J Sex Educ. 2020 Oct 13;15(4):530–542. ,Sex Education in School, are Gender and Sexual Minority Youth Included?: A Decade in Review



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