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子どもたちの性の情報源はどこから?〜ポルノが“性の教科書”にならないために~

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 「からだや性について知りたい」と思うのは、ごく自然な欲求です。思春期に自分のからだの変化や恋愛感情に直面したり、そして自分と人との違いが気になったりするなかで、ときに不安になったり、これってどういうことだろうと疑問をもち考えたりすることは、珍しいことではありません。

 では、子どもたちが「知りたい」と思うその問いに対して、応えてくれる安全で信頼できる情報先はどこにあるのでしょうか。ここでは、日本性教育協会による『「若者の性」白書 第9回青少年の性行動全国調査報告』などの調査から、子ども・若者たちの性情報の現状についてまとめました。そして、もっと安心して安全な性情報を入手できるために、日本の学校教育にどのような課題があるかについて考察していきます。


データから見える現状

✔「性交」について知るのは、半数近くが小学生まで、8割が中学生まで

日本性教育協会「若者の性」白書によると、大学生と高校生に「性交について知った時期」を尋ねたところ、半数近くが小学生までに知ったと回答しました。このときのアンケート回答者のうち、学校で性交について教わったと回答したのは男子9%、女子8%に過ぎません。中学校までに性交を知ったと答えた割合は約8割でした。つまり、多くの子どもたちが小・中学生のうちに、学校以外の場所――つまり、友人やネット、ポルノを通じて性交を知ったと考えられます。


✔ 性交の主な情報源は友人・アダルト動画・SNS

同調査では「性交の情報源」として、友人や先輩からの影響が男女ともに過半数を占めていることが分かりました。さらに、男子ではアダルト動画の影響が大きく、中高生男子で利用率が上昇傾向にあること、また、男女ともにウェブサイトやSNSを通じて知った割合が3~4割と一定数あることが分かりました。


✔ SNSを介した性被害の増加と低年齢化

警察庁の統計(2024年)では、SNSを通じた未成年への性被害は年間1486件で、そのうち不同意性交罪の被害が増加しています。特に中学生の被害が最も多く(748人、全体の約50%)、小学生も136人と増加傾向にあります。被害の低年齢化が強く懸念される現状があります。

アクセス手段は95%以上がスマートフォンでした。フィルタリングを利用していなかった割合は約90%にのぼり、端末の制限だけでは防げない現実が浮かび上がっています。


✔ スマホを持ち始める平均年齢は10歳

NTTドコモ・モバイル社会研究所(2024年)の調査では、子どもがスマホを持ち始める平均年齢は10.3歳です。小学校高学年頃から、インターネットを利用しやすい環境があるため、偏った性情報に触れる可能性も高まります。


このような状況で、ポルノが子どもたちの“性の教科書”となることで、性の健康リスクにつながります。

  • 合意や対話のプロセスが描かれず、性暴力の加害・被害につながる可能性がある

  • 多様な性のあり方が示されず、特定の身体的特徴が「魅力的」「当たり前」とされ、自分に自信を持てない

  • 性感染症や妊娠といったリスクや対策が描かれず、無防備になってしまう


 この空白を埋めないまま成長すれば、誤解や不安、そして暴力につながる危険性があります。


国際的な視点と日本の課題

 UNESCOの国際セクシュアリティ教育ガイダンス(2018年)は、科学的根拠と人権に基づく包括的性教育を推奨しています。世界では、年齢に応じて避妊や同意、人権について段階的に学ぶカリキュラムが導入されている国もあります。

 一方、日本の学習指導要領には「はどめ規定」があり、妊娠・出産・避妊などを十分に扱えないのが現状です。国際基準と比べても、教えることを制限することに教育的なメリットはないばかりか、むしろ、すでに小学生までに半数近くが性交について情報を得ている今日において、こうした制約が子どもをポルノやインターネット上の不確かな情報に頼らせてしまう大きな要因になっているといえます。偏った情報源が”教科書”にならないように、今こそ学校教育の役割が問われています。


安全で安心できる性の情報源はどんなもの?

 子どもたちに必要なのは、好奇心や不安に正しく答えてくれる「信頼できる情報源」です。科学的に確かな知識を、年齢に応じて分かりやすく伝えること。そして、からだや心の違いを尊重する視点や、相手と対等にかかわるためのスキルを学べる場です。学校での体系的な性教育はもちろん、家庭や地域、医療者や専門家によるサポートが組み合わさってはじめて、子どもたちは安心して成長できます。最近では、サイトの中でも医療従事者の監修のもと、信頼性の高い情報を発信しているものも増えてきており、大人自身も学び直し、正しい情報を共有できる存在となることが求められます。


もっと知りたいと思ったらー性教育に関する情報サイト-


<参考資料・サイト>

・日本性教育協会(編)(2025年)『「若者の性」白書 第9回青少年の性行動全国調査報告』小学館

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