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性教育における「はどめ規定」を削除すべき根拠とは?

  • 2月20日
  • 読了時間: 5分

 日本の学校教育には、性の指導に関して「妊娠の経過(性交)は取り扱わない」とする、いわゆる「はどめ規定」が存在します。近年、教育関係者やNPO、学会などから「はどめ規定」の撤廃を強く求める声が挙がっていますが、「妊娠の経過を取り扱わない」とすることの何が問題なのでしょうか。ここでは複数の視点から、「はどめ規定」の妥当性について検討していきます。


国際的には「包括的性教育」がスタンダード

 国際的には、発達段階に応じて性に関する知識やスキルを積み上げる「包括的性教育(Comprehensive Sexuality Education: CSE)」が性教育のスタンダードです。UNESCOの国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、包括的性教育が若者の健康にプラスの効果をもたらすことが繰り返し確認されています。


✔性行為や性感染症のリスクを高めない

✔正しい知識の習得につながる

✔避妊具やコンドームの利用が増える

✔ジェンダーを取り入れたプログラムのほうが効果的


 さらに、性行為開始前の早期導入が最も効果的であり、幼児期から段階的に積み重ねる学びが、将来にわたって自分や他者を大切にする態度やスキルにつながることも示されています。このような国際基準と照らし合わせると、「はどめ規定」により学習を制限する仕組みの正当性は十分にあるとは言えません。


日本の子どもたちの現状と社会のニーズ

 子どもたちがおかれる現状はどうでしょうか。スマートフォンを所持開始する平均年齢は10歳と低年齢化している現状もあり、インターネットやSNSがより子どもにとって身近な社会となりました。このような社会環境が、性被害や子どもの性知識にも影響を及ぼしています。


  • 性被害の低年齢化

警視庁の統計では、SNSを通じた未成年の性被害は令和6年に1,486件。そのうち小学生は136人にのぼり、10年前の約4倍に増加しています。


  • 性について知るのは学校外

性に関する情報源についての調査では、友人、SNS、特に男子ではアダルトビデオが多くを占めました。性交については、学校で教わっていないにもかかわらず、小学生の段階で約半数がすでに知っていたというデータもあります。これらの結果から、信頼できる情報を得るより前に、偏った情報や正確ではない知識を得ている可能性が示唆されます。


 このような問題もさることながら、一方で世論調査では88%が「はどめ規定」撤廃に賛成と、性教育の必要性に関する社会的合意形成がなされはじめています。もっと早く、もっと具体的に妊娠や避妊について知りたかったという若者をはじめとした社会の声が届いています。

 「はどめ規定」により学習が制限されるよりも、信頼できる知識を学校で学習することに対して、社会の理解も進んでいることが分かります。


法律や政策も方向性を示している

 近年の法律や政策も、正しい知識を普及させる方向に動いています。


  • 2023年刑法改正

同意のない性交は性暴力であることする「不同意性交等罪」が新設され、性的同意年齢が16歳に引き上げられ、性的同意の重要性が示されました。


  • 成育基本法

成育基本法は、妊娠期~小児期までを通じて子どもが健康に成長できる環境を保障することを目的に制定された法律です。2023年の基本方針では、思春期に性に関する科学的に正しい知識を身につける必要性について明記されました。


  • プレコンセプションケア

子ども家庭庁が推進するプレコンセプションケアは、将来の妊娠にそなえて妊娠前の段階から心身の健康を整えるための教育を指しますが、「プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会」(2025)では、「妊娠が成立するまでの過程や正しい避妊の知識を得て、実践に繋げることは、心身の負担を伴う予期せぬ妊娠のケースを防ぐことに繋がる」と明記されました。


 法律も政策も、科学的知識の普及を求めています。性的同意については、16歳に到達すると同意できる能力があるとみなされることが法改正により明記されました。しかし、学習指導要領には依然として「はどめ規定」が残り、学習は制限されています。学校での教育体制は、これらの政策や法改正との整合性が十分にとれておらず、結果不利益を被るのは子どもたちではないでしょうか。


根拠なき「はどめ規定」を超えて

 国際的なエビデンス、国内の現状と社会のニーズの高まり、法律や制度の示す方向性など、どの視点からみても「はどめ規定」を残す理由は見当たりません。曖昧な規定によって学習を制限するのではなく、根拠に基づいた包括的性教育の導入によって、子どもたちの安全や健康が保障される社会に向けて「はどめ規定」は撤廃されるべきだと考えます。


<参考資料・サイト>

・日本性教育協会(編)(2025年)『「若者の性」白書 第9回青少年の性行動全国調査報告』小学館

・日本世論調査会(実施主体)(2023)「『子どもの安全』に関する全国郵送世論調査」(中学生の性教育における歯止め規定についての設問) 


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